任期付き助教は、任期付き羊の夢をみるか?

任期制を導入した人たちは、任期付き羊の夢など見ないだろう。

西川伸一氏の日本語力の低下が深刻なレベルに

本ブログでも何度も紹介している西川伸一氏。

Yahoo! ニュースに投稿している西川氏だが、

タイプミスや事実誤認が多く「記事」と呼べないものも多い。

 

特に最近の記事は酷く、西川氏の精神が深刻な状況なのではないかと心配になる。

 

2016年4月16日の記事の要旨を引用してみよう。

 

私たちの体は複雑で、一つの検査値で語れることは知れている。なのに、食品業界はそれが当たり前と思っているのではと心配している。 

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何が言いたいのか、まったく分からない。

もはや、タイプミスでは済まされない状態である。

ブログ主は西川氏の日本語力の低下を心配している。

衝撃のクマムシゲノム解析結果 -コンタミおち編

前々回と前回の記事で、クマムシゲノム中に大量に水平伝播(HGT)遺伝子が見つかった事と、その大量HGT遺伝子は実験ミスによる誤解ではないかという疑念に至った経緯を書いた。

 

衝撃のクマムシゲノム解析結果 -大量HGT遺伝子大発見編 - 任期付き助教は、任期付き羊の夢をみるか?

衝撃のクマムシゲノム解析結果 -疑念編 - 任期付き助教は、任期付き羊の夢をみるか?

 

アメリカのグループがクマムシゲノム中に大量にHGT遺伝子が存在することを示した論文を発表した4ヶ月後に、カナダのグループが独自のクマムシゲノムの解読結果を発表した。

そのカナダのグループの論文の内容は、タイトルに簡潔に表されている。

 

そのタイトルは、

 「No evidence for extensive horizontal gene transfer in the genome of the tardigrade Hypsibius dujardini」

クマムシゲノム中に大量の水平伝播遺伝子は見つからなかった

である。

 

元のアメリカのグループの論文のタイトルが、

Evidence for extensive horizontal gene transfer from the draft genome of a tardigrade」

クマムシゲノム中に大量の水平伝播遺伝子が見つかった

であるから、カナダのグループの論文のタイトルは明らかにパロディである。

 

カナダのグループは、実験を行う際にクマムシの洗浄には十分気をつけていた。

それでも、細菌などの他の生物のDNAの混入は避けられず、DNA配列のアッセンブリの際にも間違って細菌などのDNAをできるだけ排除するように努めた。

 その結果に見つかったクマムシゲノムのHGT遺伝子数は、全体の遺伝指数のわずか0.2%であり、アメリカのグループの結果の1/50から1/100程度であった。

この0.2%という割合は、クマムシの近縁種と比べても同じ程度だと考えられる。

よって、大量のHGT遺伝子というのは幻であったことが証明された。

 

 

 

 

 

くまモンは、やはり優秀だった。

4日ほど前、くまモンツイッターを煽るようなニュースを批判する記事を書いた。

くまモンは黙っているのが正解だろう。 - 任期付き助教は、任期付き羊の夢をみるか?

 

このような大災害の後は、被害の全貌が分かるまで不用意な発言は控えるのが賢明だろう。

ツイッターのような短い文章では、誤解も起きやすいので特に注意が必要だ。

被災者の中にもくまモンファンはたくさんいるだろうが、くまモンを楽しめるようになるまでにはまだ少し時間が必要だろう。

 

そして今日のニュースで、くまモンのメッセージが載っていた。

くまモン隊は、この度の地震に見舞われた方々の事を最優先に行動しているところであり、SNSでの情報発信については控えておりますので、御理解いただきますようお願いいたします(下記サイトより引用)」

nlab.itmedia.co.jp

 

くまモンは、やはりおりこうさんだった。

衝撃のクマムシゲノム解析結果 -疑念編

前回の記事では、クマムシゲノムの解読され大量の水平伝播(HGT)で得られた遺伝子が発見されたことを紹介した。

 

letsseq.hatenablog.com

 

なぜ、この大量のHGTで得られた遺伝子の発見が話題となったか、少し解説をしよう。

異種間(例えば人間とカエルなど)での遺伝子の受け渡しであるHGTは通常は稀である。

このような方法で加わった遺伝子の多くは、その遺伝子単独で機能を持っている可能性が高い。

今回の場合でも、細菌の乾燥耐性などの遺伝子が、まったく別の種であるクマムシの細胞の中でも、同様な機能を持っていると結論付けられた。

そうであるならば、その細菌の遺伝子を植物の細胞に入れれば乾燥に強い植物が出来たり、動物の細胞に入れれば人工培養に強い細胞が出来たりするかもしれない。

たった1つの遺伝子で、乾燥に強い植物や人工培養に強い動物細胞ができれば画期的なことだ。

その遺伝子が、このクマムシのゲノムの中に必ずあるはずだ。

それゆえこの研究は注目を浴びた。

 

しかし、論文発表当初から、ネット上では一つの懸念が議論されていた。

クマムシの表面や体内にいた細菌の遺伝子を、クマムシの遺伝子と間違えているのではないかという懸念だ。

 

horikawad.hatenadiary.com

 

現在のシークエンス技術は、目的のDNAを細かく切ってから解読し、解読後のデータをコンピュータで解析し、元の長いDNA配列を復元する(「アッセンブリ」という)。

ちょうど、新聞紙をシュレッダーにかけて、ばらばらになった文章を文脈などによって集めて、元の新聞を復元するようなものだ。

この時に、折込み広告も混ざってシュレッダーしまっていたら、復元した時に元の新聞に広告が混じったものが作られてしまうかもしれない。

であるから実際の研究では、細菌などの混入を防ぐ出来るだけの努力をし、DNA配列のアッセンブリには時間をかけて丁寧に行うのだ。

 

しかし、論文ではクマムシの洗浄を十分行ったようには書かれていないし、DNA配列のアッセンブリも丁寧に行ったように書かれていない。

だからHGTで得られた遺伝子と言われたものの、ほとんどがクマムシの表面や体内にいた細菌の遺伝子ではなかったのかという懸念がでたのも当然だ。

 

そして、4ヵ月後この懸念が現実のものであったと証明されてしまう事になる。

 

続く

 

 

 

 

 

ブログ開始1ヶ月で1000 pv突破!とりあえず1000 pvを突破する方法。

このブログを開始して1ヶ月となります。

おかげさまで、当面の目標としていた最初の1ヶ月で1000 pvを達成しました。
 
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嬉しい限りです。
このブログ開設の目的は幾つかあるのですが、その目的を達成できるよう頑張っていきます。
 
まだまだ未熟者ですので、偉そうな事は言えませんが、はてなブログでブログ開設から1ヶ月以内で1000 pvを達成するヒントを3つ。
 
1. ブログチャレンジはだいたい正しい
 
はてなブログのブログチャレンジの項目を一つずつこなしていくと、pvも少しずつ増えていきます。
ブログ主の場合、ブログのデザインを変えたらpvが急増しました。
 
ブログのデザインなんかどうでもいいと思っていたので、これには驚きでした。
関連記事や任期記事の一覧を見やすい場所に置いたのが効果あったのだと思います。
あと、ブロググループに参加したり、プロフィール画像をアップロードしたりと、pvアップの基本的な事が学べます。
もちろん無料です。
 
2. 記事にはできるだけ写真を載せ、文字数は500から1000文字程度
 
写真は自分で撮ったものか、フリー画像サイトから取って来ましょう。
著作権には特に注意しましょう。
フリー画像サイトに記事に合う写真があれば、自分で撮ったものよりもいいでしょう。
やはり、プロやそれに近い方が撮影した写真の方が綺麗です。
文字数は500以下だと短すぎて検索でヒットしにくいようです。
逆に1000を大きく超えてしまうと長過ぎるという印象になるようです。
その場合は、前編と後編などに分けて投稿しましょう。
 
3. 短期的にpvを稼ぐ記事と、長期的に稼ぐ記事をバランスよく
 
スタートアップ期には、長期的にpvを稼げる記事だけを投稿しても、pvはあまり上昇しません。
かといって、一時的な話題を追った短期的にしか稼げない記事ばかりでは成長性もなくなってしまいます。
その両方をバランスよく投稿する事が大事です。
短期的に稼げる記事で、ブログを知ってもらい、ついでに長期的に稼げる記事も読んでもらうという様に。
それぞれの記事の割合は1対1(同数)程度で良いと思います。
このブログも開始直後は有名人ネタ(一時的な話題)がアクセス上位を独占してましたが、現在は卓越研究員ネタ(長期的な話題)が一番人気で、MiniSeqネタもランク上昇中です。
 
次は月間3000 pvを目指していきたいと思います。
 
 

30日間記事投稿 & 記事数50達成 このブログのこれから

おかげさまで連続記事投稿日数が30日に達しました。
総記事数も50になり、ブログとしての体裁も整いつつあります。
最初の1ヶ月は、とにかく記事数を増やして行こうと思っていたので、順調な滑り出しだと思います。

セットアップの時期を終えましたが、このブログの開設目的はまだ何も達していません。
その目的を達成できるように、これからの方針を3つ示したいと思います。

1. シークエンシングTipの情報提供

ブログ主の仕事は、毎日シークエンシングしたり、データ解析をしたりすることなのですが、その過程でちょっとしたTipを発見する事もあります。
それが、論文になる事もありますが、多くの場合はそのまま未発表で終わっていきます。
そのような有用Tipを公開していきたいと思います。

2. バイオの成功学の開始

ブログ主と同年代で研究分野での「成功者」と言えば、多くの場合で任期なしの大学教員になった人の事です。
任期なしの職の競争率を考えれば、そういう職に就けた人は十分成功者なのかもしれません。
しかし、まるで子供の将来の夢の上位に公務員がランクインしてしまうかのように、夢のない事に感じます。
これからこのブログでは「バイオの成功学」と題した記事を投稿していきたいと思います。
その中では、任期なしの大学教員以外、もしくはそれ以上の「成功」への道を歩んだ人たちを紹介し、成功へのヒントを見つけていきます。
バイオの成功学は月1回程度の更新を目指します。

3. 研究不正問題の情報提供

ブログ主の趣味の一つに研究不正問題の情報収集があります。
この10年ほど続けてきましたが、陽の目を見る事のない趣味だと思っていました。
しかしSTAP細胞事件の時に、分野外の人も含めた周りの人に状況を解説するうえで、この趣味が役に立ちました。
STAP細胞事件を契機に日本でも研究不正防止体制が整うかと思いましたが、ここ1、2年は逆戻りのような状況です。
STAP細胞事件の時に感じたのは、他の人との研究不正問題に関する情報量のギャップでした。
この問題が少しでも多くの人に知れ渡れば防止体制の強化も進むのではないかと思います。


これから更新頻度は落ちるかと思いますが、役立つ情報を提供していきたいと思います。


衝撃のクマムシゲノム解析結果 -大量HGT遺伝子大発見編

過酷な環境にも耐え、「最強生物」とも称されるクマムシ

そのクマムシゲノムの解読され、衝撃の解析結果が昨年の終わり頃に発表された。

 
論文(PNAS)
Evidence for extensive horizontal gene transfer from the draft genome of a tardigrade
 
関連ニュース
 
 
衝撃だったのは、クマムシゲノムにコードされている遺伝子の内、
約1/6が水平伝播(HGT)で得られたものだと言うのだ。
遺伝子は通常親から子へ受け継がれる(垂直伝播)。
しかし、HGTは異なる生物種間での遺伝子のやり取りのことを言う。
 
原核生物ではHGTはよく起きるとされているが、真核生物では稀であるとされる。
真核生物のHGTの全貌はまだ明らかではない。
しかし、多くの生物種でゲノムにコードされている全ての遺伝子のうち、HGTで得られた遺伝子はおそらく1%未満ではないだろうか。
 
それに比べて、少なくとも10倍以上の数のHGT遺伝子がクマムシでは見つかったのだ。
その大量HGT遺伝子の獲得メカニズムを上記サイトでは日本語で解説してある。
研究チームによると、クマムシのDNAは、極度の乾燥状態などの極めて強いストレスにさらされると細かく断片化される。細胞に水分を戻すと、DNAを格納している細胞核と細胞膜は一時的に物質を通しやすい状態になり、水分子以外の大型分子も容易に通過できるようになる。細胞が水分を取り戻すにつれて、クマムシ自身の断片化したDNAが修復されると同時に外来DNAが取り込まれ、異種生命体から伝播される遺伝子の「パッチワーク」が形成される。(クマムシに大量の外来DNA、驚異の耐久性獲得の一助に?)
クマムシの中のHGT遺伝子の多くは、細菌由来と考えられる。
そして研究グループはクマムシの特性と多数のHGT遺伝子の関係を次の様に考える。
「極度のストレスに耐えて生存できる動物は、外来遺伝子を獲得する傾向が特に高い可能性がある。そして細菌遺伝子は、動物遺伝子よりもストレス耐久能力が高いのかもしれない」 (クマムシに大量の外来DNA、驚異の耐久性獲得の一助に?)
 
なるほど。
もともとクマムシは他の種の遺伝子を取り込みやすく、取り込んだ遺伝子はクマムシの環境ストレス耐性に一役買っていたのだ。
説明に筋が通っているかの様に見える。
しかし、この大発見も数ヶ月後に覆されることとなる。
 
続く
(続編は数日中に投稿予定)