私たちの周りには、同情してくれる人はいなくなっていた。(その1)
Yahoo!ニュースの特集でも「任期付きポスト」が日本の科学の発展の妨げになっていると取り上げている。
しかし、もう数年前から国立大学で問題となっているのは「年俸制移行」だ。
そういった意味では「任期付きポスト」問題は既に時代遅れだ。
「年俸制移行」問題とは、今まで公務員的であった大学教員の雇用形態を、外資系企業で見られるような年俸制に半ば強引に移してゆくということである。
もちろん「移させよう」としているのは大学当局(理事会*)側であり、「移行に抵抗」しているのは大学教員である。
*)大学の理事会は大学教員(主に教授)の中の「実力者」で牛耳られる。
各国立大学では、あたかもこの年俸制への移行のスピードを競いあっているかのような光景が繰り広げられている。
このことから、これまで思いつきで始めたとしか思えないような「改革」を何度も奨めてきた文部科学省*の強い意向があるのだろうと推測できる。
*)文部科学省と国立大学は、親会社と子会社のような関係だと想像してもらえるとわかりやすいかと思う。
「移させよう」としているのは大学当局側は、この年俸制への移行を「これまで通りの退職金が受け取れる任期無し(実質「終身雇用」)の教員と、退職金が出ない任期付の教員などとの待遇差を解消するため」などとしている場合が多い。
しかし、年俸制へ移行した場合の生涯賃金で考えると、1割程度の所得削減になるケースもよく見られる。
賃金削減を取り繕う為の年俸制移行である。
そのため、大学教員の多くはこの年俸制を嫌がり、今まで通りの雇用形態を希望しているようだ。
数年前より、大学当局側はあの手この手で、なんとかして年俸制教員の割合を増やそうと試みている。
年俸制移行に関するセミナーに教員を強制参加させたりとか、
早期に年俸制への移行した教員には特別手当を出したりとか、
立場の弱い新規教員は強制的に年俸制したりとか、
色々とセコいアイデアを試している。
(続く)