東大病院の研究不正疑惑 続報3 ordinary_researchersのデータ捏造告発文の分析
告発文を読んで、分かったことや推定できること。
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続報(↓)
告発者(ordinary_researchers)について
1. 告発者たちの中には、東大医学部(少なくとも東大)関係者がいる。(推定)
2. 告発者たちの中には、研究不正問題にかなり詳しい人物がいる。
3. 告発者たちの中には、研究分野にかなり詳しい人物がいる。
4. この告発は、事実上KT氏(東大病院所属)を狙い撃ちしたものであろう。
告発者たちに関した詮索はあまりしたくないのでこれぐらい。
論文の分析方法について
5. 分析方法は論文中のグラフやチャートからデータを元データ復元し、その元データの不自然さやグラフやチャートの作成過程の不備を見つけるという方法が取られている。
6. 従来の画像の切り貼りや流用を見つけると言う方法は取られていない。
7. 5.の方法により元データが存在していない(データの捏造)可能性を指摘した(告発内容の一部)。
おそらく内部告発であるが、外部の人物でも不正の可能性を指摘できる方法が取られている。従来は外部からの指摘では画像の切り貼りや流用の発見という方法が多かったが、今回はグラフやチャートを分析するという新しい(?)方法(ベクトルデータ法)が取られている。過去の「シェーン事件」では、2つの論文で(ほぼ)同じチャートが使われていることが見つかり研究不正暴露につながったが、今回の手法はそれを更に発展させたものと言えるかもしれない。今回のようなベクトルデータ法での研究不正(疑惑)の告発は、少なくとも国内では過去に例が無いと思う。
過去の告発との関連など
8. 2015年の匿名A氏の告発と重複する論文はない。
9. 匿名A氏は東大病院と病院長を名指しで批判しており、今回の告発の対象は東大病院と元(前?)病院長である。
10. 告発対象となった11報のうち一番古いものは2003年発表であるが、7報が2011年以降に発表された比較的新しいものである。
11. 告発対象となった11報のうちの1報で、過去に研究不正が原因で東大から処分を受けた人物の名前が共著者として掲載されている。
2015年の匿名A氏の告発との比較は昨日投稿したので是非そちらを。東大では2005年に工学部の生命科学系の研究室での研究不正(疑惑)が発覚している。もちろん東大病院の関係者もそのことを耳にはしていたであろう。しかし杜撰な論文作成体制が正されることはなかったようである。大学によっては「研究不正調査は過去5年間に発表された論文に限る」と規定している場合もあるが、今回の11報のうちの過半数が2011年以降に発表されたものであり、各研究室で元データが保存されていることが期待される(もちろんちゃんと実験していればの話であるが)。