任期付き助教は、任期付き羊の夢をみるか?

任期制を導入した人たちは、任期付き羊の夢など見ないだろう。

西川伸一氏もタイムマシンの開発を進めているのではないか?

昨日の記事で、千葉大学が都合の悪い過去を消そうと躍起になっていると書いた。

他にもネット上で都合の悪い過去を消そうと躍起になっている人物がいたので、今日はその人物について。
理研CDB顧問の 西川伸一氏のことである。
 
榎木氏同様に西川氏もY!ニュースに記事を投稿している。
西川氏の現在の立場も、やはりセミプロの科学ジャーナリストのようなものであろう。
昨年の9月から断続的にSTAP細胞騒動や研究不正に関する記事を投稿している。
西川氏は、小保方氏の理研での採用に関与し、STAP細胞関連の論文では学術的なアドバイスもしていたとされる人物である。
事件を検証する上で、現場の近くにいた人物の証言ほど貴重なものはないだろう。
しかし、西川氏の記事には事実誤認や研究不正への無理解が多く、事件の検証にはあまり役立たない。
事実誤認があまりに多すぎて、西川氏は過去の上書きを試みているのではないだろうか、と思えるほどだ。
 
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(↑)「ドラえもん」のタイムマシン。作中では都合の悪い過去を変える目的でたびたび使われた。
 
具体的に、3月28日の西川氏の記事をみて問題点を挙げてみよう。
(同記事のWeb魚拓
 
 
 
まずは、STAP細胞論文発表の記者会見の日にちであるが、
 

あの賑々しい記者会見の日である2013年1月28日月曜日ではないかと思う

 

とあるが、実際に記者会見が開かれたのは2014年1月28日である。
 
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(↑)西川氏にとっての「あの日」は2013年1月28日である様子
 
 
次に

小保方氏事件のように若手の自発的で主導性が際立っている場合、騙された側の組織や研究者から見れば腹立たしい極みだが、問題はそれほど深刻ではない。

 

とある。
 
小保方氏が主導して事件を引き起こして、理研CDBは騙された側と言いたい様だ。
しかし、小保方氏(と若山氏やバカンティ氏など)の力だけではSTAP細胞の論文がNature誌に受理されることは無かったのは事実である。
理研CDBの重鎮ともいえるような研究者たちの関与が無ければ、Nature誌に受理されることも、「賑々しい記者会見」も無かったであろう。
それでも「小保方氏が主導」で理研CDBは「騙された側の組織」と言い張るつもりだろうか。
もっと言ってしまえば、小保方氏を理研CDBのユニットリーダーとして採用しなければ、このような事件は起こりえなかった。
その採用決定に関わったのは、一体誰であろうか? 西川さん!
 
 
続いては、誤字。

ところが、1月28日の「あの日」、笹井 芳樹さん、若山 照彦さん、理化学研究書、行政、政権、メディア、

 

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 理化学研究書⁈
自分の所属していた機関の名前ぐらい間違わずにタイプしましょうよ、西川さん。
 
 
そして、いよいよ本格的な過去の上書きが始まる。
 

そしてこの期待は不正の指摘により、瞬時に失望、軽蔑、怒りへと変わり、国民を含むすべての関係者が冷静さを失ってしまった。

 と、西川氏は述べる。

 
不正の指摘の後の混乱ぶりを西川氏は忘れてしまったのだろうか?
不正が指摘されて、国民や関係者がすぐに「失望、軽蔑、怒りへと変わ」ったようには到底思えない。
小保方氏はSTAP細胞が存在する証拠があるようなコメントを出し続け、
不正調査委員会は、白とも黒ともつかないような報告を繰り返し、
副所長であった笹井氏までもSTAP細胞の存在を信じるという記者会見まで行っている。
不正調査委員会は結論を出すまでに1年近くかかっており、その間多くの国民はデマも含む様々な情報に惑わされ続けた。
なにを根拠に「瞬時」と言うのだろうか?
 
 

当時メディアも政府も、「iPS細胞」と同じように、我が国の優秀性を示すナショナリズムの象徴として、第二、第三の「山中 伸弥」を待ち望んでいなかっただろうか?

 と、西川氏は訴えかける。

 
しかし、STAP細胞が発表されて、「第二の山中氏」や「第二のiPS細胞」という期待になったのだから、論理が全く逆である。
STAP細胞(騒動)がなければ、「第二の山中氏」や「第二のiPS細胞」なんて発想は国民の大多数には思いつかなかっただろう。
理研CDBこそが、「第二の山中氏」や「第二のiPS細胞」を欲していたのではないだろうか?
(そして、なぜか呼び捨てられる山中伸弥氏。)
 
 

アベノミクスの将来を担うイノベーション、第三の矢として一般にもわかりやすい象徴を望んでいなかっただろうか?

 と、西川氏はさらに問いかける。

 
しかし、当時はアベノミクスが(少なくとも見かけ上は)上手くいっていたのだから、殊更に科学技術の話題など必要ではなかったのではないだろうか。
理研CDBが、STAP細胞アベノミクスとを関連づけようと必死だったのではないか?
 
 

この期待が、1月28日の「あの日」の演出につながったように私には思える。

 

と、西川氏は結論付ける。
 
ここでの「この期待」は、メディア、行政からの理研CDBに対する「過剰な期待」のこと。
西川さん、『「あの日」の演出』は理研CDBが勝手にやったことではないのですか?
演出したのは理研CDBの皆さん。
騙されたのは、国民、メディア、行政。
 
(西川氏の記事にはピルトダウン事件のことも書かれている。しかし、同事件にはあまり詳しくないのでツッコミをいれないが、チャールズ・ドーソン氏がアマチュア人類学者だったりアマチュア考古学者だったりするのはおかしいと思うし、STAP細胞事件とは類似点があまりないと思う。)
 
どうやら西川氏の記憶の中では、メディアや行政の過剰な期待によりSTAP細胞事件が引き起こされ、必要以上に話題になり、そして理研CDB全体が被害者となってしまった、となっているようだ。
しかし、国民の多くはまだハッキリと記憶しているだろう。
突如現れたiPS細胞を上回る可能性があるという緑に光るSTAP細胞の写真を。
「割烹着」だの「ムーミン」だので華々しく登場した小保方氏の姿を。
小保方氏の側でSTAP技術の画期性を述べる笹井氏の姿を。
問題を引き起こしたのは、「メディアと行政」と「理研CDB」のどちらであろうか?
西川氏の記憶と国民の記憶のどちらが正しいのであろうか?
 
そして西川氏の理解では、一連の研究不正は小保方氏の主導で起こされた、となっているようだ。
しかし、生命科学の分野にいる人間ならばハッキリと理解している。
論文には若山氏、丹羽氏、笹井氏などのビッグネームが連なっていたことと、それにどのような意味があるかを。
不正発覚後に明らかになった小保方氏の実力の低さと、彼女一人ではあのような大掛かりな「捏造事件」は無理であることを。
西川氏は事件当時、いったいどこで何を見ていたのだろうか?
 
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(↑)2014年1月28日の記者会見の後、記者たちに小保方氏の研究室が紹介された場面(須田桃子著「捏造の科学者 STAP細胞事件」より)。後に、この「女子力の高い」部屋は記者会見に向けてのパフォーマンスだったことが明らかになる。ピンクの壁や花柄のソファーなどを、ユニットリーダーに過ぎなかった小保方氏が一人で仕込んだと言うのだろうか?
 
インタネット上で、過去の上書きを試みようとしても無駄である。
過去を変えたいのであるならば、タイムマシンを発明するしかない。
タイムマシンがあるならば、西川氏が戻る「あの日」はいつだろうか?
小保方氏の採用決定に関与した日に戻って、なんとしてでも不採用にするのだろうか?
それとも、笹井氏が自殺してしまった前日に戻って、なんとしてでも考え直させるのだろうか?
いくら、うっかり屋さんだとしても2013年1月28日には戻ってはいけない。
その日には、あの記者会見は開かれていませんからね、西川さん!