榎木英介氏にも「文系力」が必要だ
榎木英介氏はポスドク問題などに取り組み、積極的に情報発信を行い評判もよい。
医師としての仕事をしながらであるので、セミプロのジャーナリストの様な立ち位置だが、他にこの分野を専門にする人も少ないため、榎木氏が集めるデータは貴重であり信頼もできる。
しかし、本当のジャーナリストでは無いためか、榎木氏の文中の表現には疑問を感じることが多々ある。
「ピペド」というのは一言で説明すれば、「自力では研究する能力の無い主に大学院卒の研究者」だ。
一般の人にも分かるように説明するためにこの言葉を使うのは仕方がない。
しかし、不必要だと思える部分にも同書では「ピペド」という言葉が繰り返し使われ、Kindle検索機能で54回も見つかる程だ。
本気でポスドク問題に取り組む人間が、その蔑称を何度も使っていいものだろうか? と疑問に思う。
↑ピペドという言葉が繰り返し使われる榎木氏の著作
榎木氏は最近1週間ほどの間でY!ニュースに記事を3回も投稿した。
その3つの記事で、表現が明らかにおかしいところがあった。
23日の記事『ショーンK氏を嗤えない学術界~はびこる「学歴詐称」と「実力詐称」』では、「すべからく」の明らかな誤用がある。
24日の記事『祝好評終了!病理医ドラマ「フラジャイル」の健闘をたたえる』では、
「私たち病理医はドラマ制作者の皆さんに表彰状をあげたいくらいだ。」
とあるが、コンテストもないのに「表彰状」は、おかしい。適切なのは「感謝状」だろう。
26日の記事『政治家の「学歴詐称」に気を付けろ~ミャンマー次期閣僚「ニセ博士」事件』では、
「厳密にいえば、ディプロマミルによるニセ博士と博士論文不正は異なるが、どちらも博士号を偽って得るということで共通項がある。」
とあるが「博士号を偽って得る」では、「博士号を取得していない人間が博士号を取得しているフリをして(何かを)得る」という意図しない意味になってしまうだろう。語順を逆にして、「偽って博士号を得る」の方が適切だろう。
また、
ともあるが、「博士号に価値がない」と言い切るのはさすがに不適切。「社会な価値がない」か「価値が重く見られていない」ぐらいが適切だろう。
榎木氏はこの3つの記事の前に、『笑いごとではない「スーパー日本人」@阪大 垣間見えるのは科学技術政策へのツッコミ不足』と題した記事を投稿している。その中で、科学技術政策関係者の表現の異様さを「文系力」の不足として批判している。
しかし、最新の3記事を見る限り、榎木氏にも「文系力」が足りたいないのでは? と疑問に思わざるをえない。
大変意義のある活動を続け評判も良い榎木だけに、残念である。