任期付き助教は、任期付き羊の夢をみるか?

任期制を導入した人たちは、任期付き羊の夢など見ないだろう。

東大病院の研究不正疑惑 予備調査結果報告の予想

8月中頃に提出されたとされる、東大病院の研究不正行為に関する申し立て。

報道では東大側は9月中頃に予備調査の結果を公表するとしている。

今回の記事は、その内容公表日の予想。

 

内容は、「本調査を行わない」という結論だと予想。

不正認定をする気があるなら、前回の2015年の時点で不正認定をし処分を下していただろう。

 

今回もあれこれと屁理屈を捏ねて、本調査への移行を阻止すると予想している。

その屁理屈候補は、

①ベクトルデータ法は確立された方法ではなく、根拠に乏しい

②規定にある不正行為は、捏造、改ざん、盗用のみで、今回の不審点はそれのいずれにも当たらない

③元データを参照、分析した結果不審な点はなかった(もちろん元データの公表はしない)

 

②は以前は研究不正調査でよく使われていた屁理屈だが、最近は少なくなってきている気がする。

③と④は最近多く見られ、今回も③か④を使うと予想。

 

公表日の予想は、第一候補9月16日、第二候補9月23日、第三候補9月21日だ。

研究不正調査の結果の公表は、連休前日に行われる事が多い。

公表後に連休に入ってしまえば、連休がクールダウン期間となり問い合わせも少なくて済むし、一般の人の注目も少なくて済む。

TVの番組編成も普段とは異なり、ニュースを見逃す人も多くなる。

都合の悪いことの公表は、連休前日が鉄則だろう。

9月後半には2回祝日がある。

3連休となる17-19日の直前の16日(金)が第一候補だ。

2回目の祝日は、22日(木)であり3連休にはならないが、その前後という世間の生活サイクルが乱れる時を狙っての公表も十分ある。

逆に公表日となる可能性が低いのは、1週間の前半の月曜日と火曜日だろう。

公的機関なので土日祝日の公表は考えてられない。

 

結論として、

9月16日に「元データを参照、分析した結果不審な点はなかった」というような理由で「本調査は行わない」ことが発表される、

と予想した。

Nature Communications とかいう最凶オープンジャーナル

Nature Communications(ネイチャー コミュニケーションズ)という雑誌がある。

そのNat. Commun.の掲載料が最凶過ぎる。

 

Nat. Commun.様の掲載料

$5,200 = 53万円!*1

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ご、ご、53万⁉︎

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↑Nat. Commun. 様の横暴に立ち向かう善良なオープンジャーナルたち

 

解説は次回

 

*1:$1 = 102円 として

''シャープのプラズマクラスター 「結核予防の効果」''らしい

 

 シャープのプラズマクラスター 「結核予防の効果」 (関西テレビ) - Yahoo!ニュース

 

news.yahoo.co.jp

 

えっ?あっ?

まだ、シャープさんはオカルト科学シャープな科学を続ける気ですか?

 

よしこれをSATP (SHARP Anti-Tuberculosis Purazumakurasuta- /シャープ抗結核ぷらずまくらすたー) と名ずけよう。

将来、この技術で万能細胞ができればSATP細胞の完成だ〜。

アメリカのポスドク状況が日本とだいたい同じの様子

アメリカのポスドク状況を報じたニュースを邦訳した記事がYahoo!Japanに掲載された。

 

天才科学者をも苦しめる「ポスドク問題」のリアル 博士号をとっても40までは下働き (現代ビジネス) - Yahoo!ニュース

 

代表的な数字を取り上げると、

 

1. 博士号取得者の初任給は平均440,000円ほど

2. 安定した研究ポストに就くのは平均42歳

3. そのようなポストに就けるのは6.3人に1人

 

記事の中では、ポスドクが最初に就く安定したポストの例として「助教授」が挙げられいる。

日本では助教授という呼び方は、多くの大学では准教授に変更されたている。

日本での任期付助教ポスドクに含めて、「安定したポスト」 = 「准教授(か講師)」に変えれば、アメリカと日本のポスドク状況は大差ない、と思える。

ブログ主の周りでも、だいたい任期付雇用を脱せられるのは40歳前後だ。

しかし、日本でもそのようなポストに就ける前に脱落する人が多いとは言え、さすがに倍率は6倍も無いだろう。

 

一方で、給与の面ではアメリカの方が若干恵まれているようだ。

榎木氏の「嘘と絶望の生命科学」を見ると、

バイオのポスドクおよび任期付き助教の年収は 4 0 0万 ~ 5 0 0万円の者が 3 1 ・ 6 %と最も多く 、ついで 3 0 0万 ~ 4 0 0万円が 2 6 ・ 9 %と続く

とある。

アメリカでは初任給なのに対し、日本では全体の給与のであるから、アメリカの方が平均で1〜2割ぐらい多いと言ったところだろうか。

 

アメリカでも日本でも、博士号取得者の就職状況は厳しいようだ。

フェアな厳しさなら仕方がないかもしれない。

しかし、不正行為に手を染める人間が少なからずいる中では、真面目な人がワリを食うような目にあっているのが現実だ。

それは日本でもアメリカでも同じだ。

この問題については、改めて書きたい。

東大病院の研究不正疑惑 続報4 告発内容の検証

ordinary_researchers氏が用いたベクトルデータ法を実際に使ってみようと思ったものの、PDFからのデータ抽出にはイラストレータなどのソフトウエアが必要となるようだ。

(ただのアクロバットリーダーやパワーポイントだけではダメ)

この作業を行ってくれるフリーソフトもたくさんインタネット上にあるようなので、「ど・れ・に・し・よ・う・か・な~」選んでダウンロード・インストールしている最中に、問題となっている論文(NATURE)を見ていると、別にそんなソフトウエアが必要ないことに気がつく。

 

以下、問題の論文より。

(赤字や赤い線・矢印はブログ主によって付け加えました)

 

Fig2f エラーバーが斜めになっている。

横棒のみならず縦棒も傾いている。(赤線が水平)

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Fig2e 丸いプロットの後ろに何か居る。

エラーバーの横棒も浮いている。

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Fig3a プロットの位置と曲線がズレまくり。

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 肉眼だけでもグラフやチャートがエクセルなどのソフトウエアを使って、正しく作成されたものではないと判断できる。

エクセルなどである程度までグラフやチャートを描き、その後にエラーバーやプロットをパワーポイントなどで付け加えた様である。

後から付け加えたと思えるエラーバーが同じように若干傾いているのは、コピペでエラーバーを「増殖」させたからだろう。

パワーポイントなどで正確にエラーバーを付け加えるなどほぼ不可能であるし、手抜きしてコピペでエラーバーを増殖していたなら正確な図など描けるわけがない。

「図はイメージです」というノリで作図をしていたのだろうか?

この論文の半数以上のグラフやチャートで、エラーバーが斜めだったり浮いていたり、プロットの背後に何か隠れていたりというような何かしらの不審な点が見つかった

 

ordinary_researchers氏のようにもっと詳しく分析すれば、不審な点は無尽蔵にでてくるかもしれない。

ordinary_researchers氏は告発文で次のように述べている。

 

試みに始めた検証であったが、結果として我々が得たものは統計学的に信じることが出来ないデータの山であった。専門的な解析を行うまでもなく、一見してエラーバーの位置が明らかに不自然なグラフ、さらにはグラフ全体が実験に基づいた数字から作図されているとは 思えないようなものが多く存在していた。 (告発文の「はじめに」より)

 

ごく一部ですが検証してみて、「まさにその通り」としか言えません。

 

「安定した高い地位にいる人は不正なんかしない」という誤解 東大病院の捏造論文疑惑に関して

東大病院の研究不正疑惑に関連した記事にたくさんのアクセスを頂いている。

多くの方々が研究不正問題に興味を抱いている事に感謝したい。

 

今回の騒動で研究不正問題というものをはじめて自分から調べようとした方(特に若い研究者、学生)も多いのではないだろうか。

そういった方がこの研究不正問題を正しく理解する上で妨ぎになりかねないのが、「安定した高い地位にいる人は不正なんかしない」という誤解である。

今回も実際に上氏の記事にはこのような一節がある。

 

告発された○○教授は前東大病院長、日本内科学会の理事長も務める大物だ。私は、彼が不正をしたとは思わない。そんなことをする必要がないからだ。ただ、講座のトップとして責任がある。果たして、どんな形で責任を取るのだろうか。

懲りない東大医学部、またも論文捏造 (JBpress) - Yahoo!ニュースより、個人名はブログ主によって伏せています)

 

 

研究不正は「身分の不安定なポスドクあたりが犯しそう」という先入観を持っている人も多いが、実際は高い地位に居る人間こそが研究不正を犯しているのだ。

既に松澤氏の論文で、教授や学長や所長など「アカデミックランクの高い研究者」研究不正に関与しているリスクが高いことが明らかになっている。

この事実に関して、

学長や所長などは、有名な人物であるから注目されやすく、不正が発覚しやすい(アカデミックランクの低い研究者も不正を行っているがバレないだけ)。

②不正を行えば良い論文に掲載され、結果アカデミックランクも高くなる。アカデミックランクが高くなった後に不正が発覚している。

などの意見もあり、事実の捕らえ方も人それぞれ、と言うのが現状である。

しかし、「安定した高い地位にいる人は不正なんかしない」というのが誤解であることは明らかであろう。

 

では、なぜ安定した高い地位にいる人でも研究不正を犯すのであろう?

この疑問にはいくつもの答え方があるかもしれないが、次の説明も一つの答えだろう。

「安定」とか「高い」とかはあくまで比較の表現である。

ポスドクより教授のほうが安定している」や「所長は研究機関の一番高い地位にいる」というのは誰も否定はしないだろう。

しかし、実際に教授になってみれば「ただの教授」ではなく、より「安定した教授」(多額の研究費が毎年得られる教授など)であることを求めるようになるだろう。

所長に登りつめても、それでは飽き足らずに次のステータス(ノーベル賞など)を求め始めるであろう。

欲を出したら、地位の高さや安定はに上限などないだろう。

教授や所長の立場の人が無条件で安定した高い地位にいるかのように見えるのは、若い研究者たちが厳しい立場に追いやられている現状(=ポスドク問題)の裏返しなだけなのかもしれない。

 

私たちはつい最近、安定した高い地位にいる人が研究不正に関わる例を目撃している。

STAP細胞事件のときの故S副センター長(当時)である。

彼は高い業績をあげ、当時既に将来センター長になることが確実視されていた。

しかし、STAP細胞事件の責任者の一人とされ*1、結果的に自死に至る。

もともと彼がSTAP細胞の研究にあまり関与していなかった彼が、

この研究に深く加わるようになったのはノーベル賞を意識していたためと考えられている。

この故S氏は積極的にデータ捏造などの研究不正を犯そうとしたのではないだろう。

しかし、ギフトオーサーシップも立派な研究不正であり、彼の周辺ではギフトオーサーシップが横行していたことも伺われる。

 

 安定した高い地位にいる人でも研究不正を犯す例は、日本だけでも過去にいくつもある。

研究不正問題を正しく理解するためにまずは、「安定した高い地位にいる人は不正なんかしない」という誤解を解くことが必要だ。

 

 

 

*1:STAP細胞事件では、故S氏に関しては特にギフトオーサーシップや動物実験に関する規律違反などが問題となっている。

東大病院の研究不正疑惑 続報3 ordinary_researchersのデータ捏造告発文の分析

告発文を読んで、分かったことや推定できること。

 

過去の関連記事(↓)

東大医学部付属病院の研究不正疑惑が再燃 - 任期付き助教は、任期付き羊の夢をみるか?

東大医学部付属病院の研究不正疑惑が再燃 (続報1) - 任期付き助教は、任期付き羊の夢をみるか?

東大医学部付属病院の研究不正疑惑が再燃 (続報2) - 任期付き助教は、任期付き羊の夢をみるか?

 

続報(↓)

letsseq.hatenablog.com

 

 

 

告発者(ordinary_researchers)について

1. 告発者たちの中には、東大医学部(少なくとも東大)関係者がいる。(推定)

2. 告発者たちの中には、研究不正問題にかなり詳しい人物がいる。

3. 告発者たちの中には、研究分野にかなり詳しい人物がいる。

4. この告発は、事実上KT氏(東大病院所属)を狙い撃ちしたものであろう。

 

告発者たちに関した詮索はあまりしたくないのでこれぐらい。

 

 

論文の分析方法について

5. 分析方法は論文中のグラフやチャートからデータを元データ復元し、その元データの不自然さやグラフやチャートの作成過程の不備を見つけるという方法が取られている。

6. 従来の画像の切り貼りや流用を見つけると言う方法は取られていない

7. 5.の方法により元データが存在していない(データの捏造)可能性を指摘した(告発内容の一部)。

 

おそらく内部告発であるが、外部の人物でも不正の可能性を指摘できる方法が取られている。従来は外部からの指摘では画像の切り貼りや流用の発見という方法が多かったが、今回はグラフやチャートを分析するという新しい(?)方法(ベクトルデータ法)が取られている。過去の「シェーン事件」では、2つの論文で(ほぼ)同じチャートが使われていることが見つかり研究不正暴露につながったが、今回の手法はそれを更に発展させたものと言えるかもしれない。今回のようなベクトルデータ法での研究不正(疑惑)の告発は、少なくとも国内では過去に例が無いと思う。

 

 

過去の告発との関連など

8. 2015年の匿名A氏の告発と重複する論文はない

9. 匿名A氏は東大病院と病院長を名指しで批判しており、今回の告発の対象は東大病院と元(前?)病院長である。

10. 告発対象となった11報のうち一番古いものは2003年発表であるが、7報が2011年以降に発表された比較的新しいものである。

11. 告発対象となった11報のうちの1報で、過去に研究不正が原因で東大から処分を受けた人物の名前が共著者として掲載されている。

 

 2015年の匿名A氏の告発との比較は昨日投稿したので是非そちらを。東大では2005年に工学部の生命科学系の研究室での研究不正(疑惑)が発覚している。もちろん東大病院の関係者もそのことを耳にはしていたであろう。しかし杜撰な論文作成体制が正されることはなかったようである。大学によっては「研究不正調査は過去5年間に発表された論文に限る」と規定している場合もあるが、今回の11報のうちの過半数が2011年以降に発表されたものであり、各研究室で元データが保存されていることが期待される(もちろんちゃんと実験していればの話であるが)。