任期付き助教は、任期付き羊の夢をみるか?

任期制を導入した人たちは、任期付き羊の夢など見ないだろう。

東大医学部付属病院の研究不正疑惑が再燃 (続報1)

先ほど、東大医学部付属病院の研究不正疑惑の記事をアップロードした。

その記事で書いたとおり、去年(2015年)の1月頃にも東大医学部の付属病院での研究不正疑惑が話題となった。

この2015年の研究不正疑惑事件の告発人は「匿名A」氏であり、疑惑の内容は画像の切り貼りであった*1

今回の疑惑の告発文には「Ordinary_researchers」と言う署名があり、告発人は複数人のグループであることが伺える。

このグループに匿名A氏が加わっているかは不明。

 

しかし、2015年の告発の詳細を紹介したサイトを参考にすると、2015年と今回の告発対象(論文)は全く別であるようだ

 

論文著者(共著者など)として、2015年と今回の告発対象の両方の論文に関与した人物がいるかどうかはこれから調査したい。

 

続報2

*1:この2015年の告発対象には東大医学部以外から出された論文も多数含まれていた

東大医学部付属病院の研究不正疑惑が再燃

 

東大医学部付属病院の研究不正疑惑が再燃しているようだ。

 

zasshi.news.yahoo.co.jp

 

告発内容(PDF、上昌弘氏のtwitter記事より引用)

その、その、その

 

東大の付属病院での研究不正疑惑は、匿名A氏が2015年1月ごろにネット上で大量の研究不正疑惑を告発した際に話題となったが、東京大学の調査により「問題なし」とされている。

しかし、前回の告発内容は画像の切り貼りが中心であったのに対し、今回はグラフなどの不信な点などが告発の大半を占めているようだ。

 

「もはや看過すべきではない」東大医学系4教授(4研究室)の基礎医学系論文における研究不正疑義の告発を受けて東大が予備調査を開始 アディポネクチン受容体NATURE論文など11報が対象 – 日本の科学と技術

 

まだブログ主は、告発対象が同一の論文かどうかは確認が取れていないものの、東大の付属病院の論文作成体制が杜撰であることは明らかなようだ。*1

 

神戸理研と東大分生研の件が(一応)済んで以来、研究不正の話題は岡山大学が中心となっていたが、話題の中心はまた東大に戻ってくるかもしれない

 

近いうちに続報+詳細記事をアップしたい。

 

続報1

続報2

続報3

letsseq.hatenablog.com

*1:実験の再現性如何に関わらず切り貼りした画像を含む論文の発表は多くのジャーナルで禁止されている。今回の告発内容の中心であるグラフのエラーバーに関しては、Excelの使い方を学べば誰でも正しくグラフを作成できたはずである。

節子、それは「進化」やない・・・

「進化」という日本語が出来たのは、明治時代のようだ。

「神経」や「自然」などの単語とともに、欧米語の翻訳語として作られた。

現在では、「コンピュータの進化」などと本来の意味を超えて

使われることのほうが多いかもしれないが、もともとは生物学の概念である。

 

「進化」の誤用で有名なのは、「ポケモンの進化」であろう。

https://www.pokemon.co.jp/otanosimi/hgss/oniisan/img/01_01.jpg

 

一般に動物などでの「進化」とは、

長い時間(少なくても何十世代や何百世代)をかけて

少しずつ元の種から変化し、別の種になることを意味する。

同じ個体の劇的な変化は「変態」と言い、

ポケモンの「進化」は本来は「変態」と呼ばれるべきである。

 

コンピュータの劇的な変化も「進化」と表現されてしまうから、

ポケモンの変態も「進化」と呼んだほうがしっくりくるのかもしれないが・・・。

 

そんな本来の意味とは異なる使い方をされる「進化」という言葉だが、

今日もYahoo!JAPANのトップページで間違った(?)使い方をされていた。

 

headlines.yahoo.co.jp

 

 悪性の顔面腫瘍で個体数が大幅に減少したタスマニアデビルは、非常に急速な遺伝子進化を通して絶滅の危機から立ち直りつつあるとみられるとの驚くべき研究結果が30日、発表された。

オーストラリアのタスマニア(Tasmania)島にのみ生息する、イヌほどの大きさの夜行性の肉食有袋類絶滅危惧種に指定されているタスマニアデビルについて、20年前に顔面腫瘍が発生した前後の294個体のゲノム(全遺伝情報)を詳細に比較した結果、ほんの4~6世代の間に、7個の遺伝子に種全体に及ぶ適応進化が起きていることが明らかになった。7個のうちの5個は、哺乳類の免疫力とがんへの抵抗力に関連する遺伝子だ。(後略)

 ネイチャー・コミュニケーションズ(Nature Communications)に発表された論文をもとにしたニュースだ。

新たな伝染性の病気の流行により、特定の遺伝子(アリル)を持ったタスマニアデビルの個体の割合が増えていると言う内容だ。

そして、その特定の遺伝子はこの病気に対する抵抗性を持っている可能性があり、この現象をネット記事では「進化」と表現している*1

 

しかし、この現象は「進化」というより「自然選択(選抜)」と呼んだ方が適切だろう。

元の論文を見ても「evolutionary response[進化的反応(変化)]」「selection(自然選択)」と表現している。

確かに、自然選択は進化の過程の重要な一部ではあるが、

自然選択によって進化が必ず起きるわけではない。

「進化」と付いたタイトルをつけるのは、ミスリーディングだろう。

 

では、なぜ「進化」と付いたタイトルが作られたのか?

論文中では著者たちは「進化」という直接的な表現は避け、

慎重な表現をしているものの、取材中では「進化」という言葉をつかったようだ。

 

ワシントン州立大学(Washington State University)のアンドリュー・ストーファー(Andrew Storfer)氏はAFPの取材に「タスマニアデビルは進化している」と語る。「特筆すべきことに、この進化は極めて急速だった」

 

米アイダホ大学(University of Idaho)のポール・ホーエンローエ(Paul Hohenlohe)氏によると、タスマニアデビルが「著しく急速に進化している」ことをこのデータは示しているという。 

 

専門家であろう著者たちが、「進化」と「自然選択」の違いを理解していないとは考えにくい。

一般の人にも分かりやすいように「進化」と言う言葉を使ったのかもしれないが、

「進化」と言う言葉を使うことによって注目を集めようとしたのかもしれない。

この取材を元にネット記事が作られ、「進化」と言う言葉がタイトルに含まれるようになったのだろう。

いずれにしろ、このネット記事により「進化」と言う言葉に対する誤解がまた広がるかもしれない。

否、誤解ではなく、「進化」という言葉の「進化」かもしれない・・・。

 

*1:「遺伝子進化」や「適応進化」とも表現。

エサを貰おうとタッチスクリーンを触ったら、

子供の名前を勝手に決められたでごザル。
 

シカゴの動物園にいるニホンザル

めでたく赤ちゃんサルが誕生した様だが、その名前の決め方がなんともデジタルネイティブだ。
 
 
 
タッチスクリーンを触ったら、勝手に名前が決まってしまった…。
普段からこのタッチスクリーンを使ってエサなどをもらっていたようだが、親はただエサが欲しかっただけでは? と疑問に感じる。
 
母親の名前がイズミで、日本にあるローマ字の「I」から始まる都市名をもとに、イワキとイコマが選ばれたようだ。
スクリーンをタッチしての名前決めは2回行われたようだ。
しかし、2回ともイワキの方がタッチしやすそうな場所に現れていたような…。
いずれにしろこの名前は「人間側の名前」であろうから、人間が認識しやすいという点が重要でしょう。
イワキという大きな都市の名前も覚えて貰えるし、いい事でしょう。
 

チンチロリンハイボールを知らないカジノ研究者が、

国民にはギャンブル教育が必要と騒ぐ。


とあるお店のチンチロリンハイボールで、

ゾロ目なら無料、
合計が偶数なら半額、
奇数なら倍額、

というルールを見てたカジノ研究者。
通常一杯が350円だから、上記のルールだと期待値が約408円になり、チンチロリンをお客側にはやる意味が無いと主張。
そして、以下の様に国民の教育に苦言を呈す。
こういうのを見ると、私としては溜息をつくしかないのですが、この商品を「プロモーション」と称して平気で掲げている店が普通に存在している事自体が私の指摘する「ギャンブルリスク教育」の不足の象徴です。

まあ、チンチロリンハイボールを知らなかった様だから仕方ないかもしれないが、このお店のルールに、奇数なら倍額としか書かれていなくても、倍額なら2倍量のハイボールがちゃんと出てくると思いますよ。
そもそも、たかが50円や60円の差で「教育がー」騒いでもしょうがないでしょう。

西川伸一氏の日本語力の低下が深刻なレベルに

本ブログでも何度も紹介している西川伸一氏。

Yahoo! ニュースに投稿している西川氏だが、

タイプミスや事実誤認が多く「記事」と呼べないものも多い。

 

特に最近の記事は酷く、西川氏の精神が深刻な状況なのではないかと心配になる。

 

2016年4月16日の記事の要旨を引用してみよう。

 

私たちの体は複雑で、一つの検査値で語れることは知れている。なのに、食品業界はそれが当たり前と思っているのではと心配している。 

 f:id:letsseq:20160422165035j:image

何が言いたいのか、まったく分からない。

もはや、タイプミスでは済まされない状態である。

ブログ主は西川氏の日本語力の低下を心配している。

衝撃のクマムシゲノム解析結果 -コンタミおち編

前々回と前回の記事で、クマムシゲノム中に大量に水平伝播(HGT)遺伝子が見つかった事と、その大量HGT遺伝子は実験ミスによる誤解ではないかという疑念に至った経緯を書いた。

 

衝撃のクマムシゲノム解析結果 -大量HGT遺伝子大発見編 - 任期付き助教は、任期付き羊の夢をみるか?

衝撃のクマムシゲノム解析結果 -疑念編 - 任期付き助教は、任期付き羊の夢をみるか?

 

アメリカのグループがクマムシゲノム中に大量にHGT遺伝子が存在することを示した論文を発表した4ヶ月後に、カナダのグループが独自のクマムシゲノムの解読結果を発表した。

そのカナダのグループの論文の内容は、タイトルに簡潔に表されている。

 

そのタイトルは、

 「No evidence for extensive horizontal gene transfer in the genome of the tardigrade Hypsibius dujardini」

クマムシゲノム中に大量の水平伝播遺伝子は見つからなかった

である。

 

元のアメリカのグループの論文のタイトルが、

Evidence for extensive horizontal gene transfer from the draft genome of a tardigrade」

クマムシゲノム中に大量の水平伝播遺伝子が見つかった

であるから、カナダのグループの論文のタイトルは明らかにパロディである。

 

カナダのグループは、実験を行う際にクマムシの洗浄には十分気をつけていた。

それでも、細菌などの他の生物のDNAの混入は避けられず、DNA配列のアッセンブリの際にも間違って細菌などのDNAをできるだけ排除するように努めた。

 その結果に見つかったクマムシゲノムのHGT遺伝子数は、全体の遺伝指数のわずか0.2%であり、アメリカのグループの結果の1/50から1/100程度であった。

この0.2%という割合は、クマムシの近縁種と比べても同じ程度だと考えられる。

よって、大量のHGT遺伝子というのは幻であったことが証明された。